羽根の生えた少年<秋の抄>Vol.14
南と話をしながら、少年は何度も小さく、飛ぶ練習をした。
まだ慣れない身体に馴染む為だ。
飛ぶこと自体は面白くもあったが、だが少年の中では「何のために」という気持ちは
ずっとあった。
「おじいさんは、畳も古いし、勉強机も布団も全部新しいのに変えて
あげようって言ってきたけど、僕が断った」
「どうして?」
「だって、気持ち悪いよ。
全部僕のものだって言われたって、僕にしたら知らないものだらけになるんだよ。
そんなの、この身体だけで充分だ…あっ」
「あっ」
2人はほぼ同時に声を上げた。
少年が勢い余ったか、昨日よりも高い位置に飛び上がったのだ。
そして、そのまま下に降りて来ないで上で留まっている。
南は上に向って困ったような声を上げた。
「は、早く降りてきてください。ご近所にその姿が見られたら…」
少年は珍しく陽気な声で返事をした。
「大丈夫だよ、この辺の家は親戚で固まってるんだ」
言うと少年は改めて辺りを見回した。
近辺は比較的低い屋根の建物が多く、駅やビルや学校など、
忘れかけていた景色が広がっていた。
「まるで全部、僕のものみたいだ…しかも、僕はこの景色を昔から知ってるんだ」。
言いようのない開放感が少年を包んだ。
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